ウイリアム占星術童話はあくまで童話ですので、文中に占星術の説明は入りませんが、なんとなく占星術のあのことを言ってるんだろうな~、って文章を書きますので、占星術的解釈は読者の方々でご自由にしてくださいね~
占星術童話16話 「乙女姫」
昔々、第6国に乙女姫という姫がおったとさ。
乙女姫は清楚な美しいお姫様。
お姫様なのでお付きのものにすべてを任せて悠々自適に暮らせるはずなのに、乙女姫は毎日のように働いていました。
乙女姫は第6国の国民たちを毎日のように気遣い、国民たちと触れ合っていました。
第6国の民たちは、何かお困ったことがあれば乙女姫に助けを求めました。
乙女姫は国民のどんな相談にも応じました。
第6国の国民にとっては女神様のような存在の乙女姫。
そんな乙女姫に縁談話があり、親孝行の乙女姫をすんなりそれを受け入れ、山羊殿という有力者と結婚しました。
山羊殿は大金持ちで、乙女姫は一切働く必要はないということで、山羊殿は乙女姫に毎日家にいて、楽に暮らし、家事さえしてくれればいいと命じました。
第6国の国民たちと毎日関わっていきたい乙女姫でしたが、夫の山羊殿がずっと家にいるようにと命じてきたので、やむなく従っていました。
山羊殿からすると、そう命じることが乙女姫への愛だったのです。
毎日家でラクに過ごしていた乙女姫ですが、ひと月もせぬうちに、原因不明の病に倒れ、寝込んでしまいました。
あれだけ毎日働いて元気だった乙女姫が死にそうな状態になりました。
乙女姫を気遣う山羊殿。
「乙女姫、ワシに何かできることはないか?」
山羊殿は乙女姫のために何ができないかと聞きました。
すると乙女姫は言いました。
「馬車を出していただき、それに私を乗せて、第6国の国民たちに会いに連れて行ってください」
山羊殿はびっくりしました。
「いやいや、乙女姫、その体で外へ出て国民に会うなど無理じゃよ」
なんとか止めようとする山羊殿。
「一生のお願いです。一日だけでいいので、国民に会いに連れて行ってください」
と涙ながらに訴える乙女姫。
そこまで頼まれると断れない山羊殿は、翌日、乙女姫を馬車に乗せて外出し、第6国の国民たちに会いに行かせました。
病に臥せりながらも、馬車から第6国の国民たちと会っていく乙女姫は笑顔いっぱい。
なぜか顔色もよくなっていきました。
半日、第6国の国民たちと会って家に帰ってきたときには、なんと乙女姫の体調は元に戻っていたのです。
「どういうことじゃ?」
驚く山羊殿。
乙女姫は山羊殿に頼みました。
「お願いです。明日からも第6国の国民たちと会わせてください」
山羊殿はそれに反対するワケにもいかず了承しました。
次の日からは、結婚前のように、毎日のように第6国の国民たちと会う日々を過ごす乙女姫。
それからはずっと健康状態は良好でした。
山羊殿は思いました。
この姫は働いてる方が元気なのだなあ、と。
やがて子どもも生まれた乙女姫。
子どもが生まれたのちも、産後外へ出れる状態になると、また毎日のように第6国の国民たちと会っていく乙女姫。
山羊殿は思いました。
この姫は死ぬまで働き続けるんだろうなあ、と。
数十年後、山羊殿は亡くなりました。
山羊殿が亡くなった翌日からも、第6国の国民たちと会っていく乙女姫。
山羊殿の思っていたとおり、乙女姫は死ぬまで第6国の国民のために働き続けました。
乙女姫の死後、乙女姫の娘の双子の姫ふたりはこう思いました。
「私は絶対に母さまのようにはならないわ」
おわり